季節に合った着物で大人のおしゃれを愉しむ。着物の種類と衣替え時期
日本には四季があり、そして季節によって外の気候や景色は驚くほどに変化します。
服はそんな季節の変化に対応するために生み出された人類の叡智の結晶ですから、長い歴史の中で季節に対応する服が生まれ、そして季節毎に着るべき服が決められていきました。
そしてこの歴史の流れは、日本の着物についてももちろん当てはまります。
着物には季節の変化に対応した種類があり、そしてそれをいつ着れば良いか、という衣替えの時期も決められているのです。
そこでこの記事では、そんな季節に合わせた着物の選び方をご紹介します。
季節により単衣・袷・薄物と着物を変える
着物には様々な種類のものがありますが、着物を季節によって選び分ける場合には「単衣(ひとえ)」「袷(あわせ)」「薄物」という3つの種類から選びます。
それぞれ着物に使われている生地に違いがあり、「袷」が最も生地が厚く、「薄物」が最も生地が薄い着物、「単衣」この中間です。
そして生地が厚いほど保温効果が高まり、寒さを防いでくれるわけですから、「袷」は主に涼しい季節や寒い季節に着られています。
このような種類毎の特徴を知ることが着物選びの第一歩になりますから、まずはそんな着物の特徴から解説していきたいと思います。
「袷」
「袷」は裏地がある着物、つまり生地を2枚使って作られて着物を指す言葉です。
そして生地が2枚あるわけですから当然「袷」の着物は厚く、寒さをしのぎやすくなります。
そのため「袷」は冬のような寒い季節や、秋や春の涼しい時期などの広い期間で着られるため、着物の中でも特によく着られる種類でもあります。
「単衣」
「単衣」は「袷」とは異なり生地が1枚しか使われていません。
そのため袷よりも涼やかに着ることができ、主に6月や9月といった暑くなりきらない時期によく着られています。
「薄物」
「薄物」は「単衣」と同じく生地が1枚ですが、その1枚の生地が「単衣」に比べてかなり薄いのが特徴です。
どれくらい薄いかというと生地が少しすけているほどですので、通気性がよく、主に7月や8月のような暑さが厳しい時期に着られます。
着物は季節や過ごしやすさで選んで
ここまで着物の種類のうちの3つを解説してきましたが、実はこれらの着物をどの季節に着るかというのはだいたい決まっていたりします。
具体的には「袷」が10月〜5月の間、「単衣」が6月と9月、「夏物」が7月と8月で、何を着れば良いのか迷う場合にはこれに従うのもいいでしょう。
ただし、この決まりはあくまで昔からそうだ、というだけで現代の気候に合わせて決められているものではありません。
今時は6月に30度を超えることも珍しくはありませんが、これは昔の人たちが着物を着ていた時期とは随分異なった状況のはずです。
そのためあまり杓子定規に従うのではなく、今、自分の身の回りがどのような気候かを考えながら、過ごしやすい着物を選んでください。
柄選びも大切な要素
着物は季節の暑さや寒さを凌げればいいというものではなく、色や柄といった見た目の要素も大切にしなくてはいけません。
そして、特に柄などは季節に応じて変えていくことも着物の選びの上では重要です。
わかりやすいのは花柄の着物でしょうか。例えば桜柄の着物があったとして、それを秋に着ていると多少違和感があるのではないでしょうか。
もちろん、着る服というのは自分の好みも重要な要素ですから、桜柄を春以外の季節に着たとしても問題はありません。
しかし風情というものを考えると、やはり季節に因んだ柄の着物を用意したいところでもあります。
自分の所持している着物や、着ていく先などを勘案しながら、その場所で見られても恥ずかしくない着物を選ぶようにしましょう。
着物の帯も季節で変える
ここまで解説してきたような季節毎の衣替えは、実は着物の帯でも同様です。
帯には春秋冬につけるものと夏につけるものがあり、これを季節によって付け替えることが推奨されます。
具体的にこの2つの帯の何が違うかというと、「裏地の有無」です。
帯にも裏地のついている帯とついていない帯があり、このうち裏地がついていて透けないものが春秋冬用、裏地がなくうっすらと透けているものが夏用の帯なのです。
これらの違いは些細なもののように思われるかもしれませんが、やはり細かいところにまでこだわるのがおしゃれというものです。
余裕があるならば、ぜひ着物の小物なども季節感を演出して細やかなおしゃれを楽しんでみてください。
まとめ
着物の種類とそれをどのように着分ければいいのかについて解説してきましたが、季節によって着物をどのように選んでいけばいいのか、おわかりいただけたでしょうか。
着物も服ですから、基本的には機能性やデザインといった洋服と同じような選び方で選んで構いません。
しかしそこに古くからの伝統的な決まりを織り込んでいくことができれば、周囲の人たちを感心させるような着物選びができるようになるのではないでしょうか。